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福岡の専門学校・大学で回答した「イラスト」に関する43の質問

2022年9月20日(火)から21日(水)の間で、計5校を訪れエンタメ業界の講義をさせていただきました。その中で、学生の皆さんからいただいた質問に対する回答を、改めてこちらに掲載させていただきます。

2022年9月30日

記事に興味を持ってくださりありがとうございます。

東京都府中のイラスト・ゲームイラスト制作会社ミリアッシュの代表をしている竹谷彰人(たけやあきと)と申します。

去る9月20日から21日にかけ、福岡の専門学校と大学をまわり講義をして参りました。ゲーム開発会社サイバーコネクトツー松山洋社長と、デジタルコミックエージェンシーのナンバーナイン小林琢磨社長と一緒に、それぞれゲーム・漫画(ウェブトゥーン)・イラストの切り口で話し、エンタメ業界を包括的に学んでもらおうといった3社合同での企画です。

この記事では、計5校の学生の皆様よりいただいた質問に対する回答を、なるべく当時の熱量を再現しつつ書いております。近しい質問もありますが、それだけ若い世代の関心が強いことと捉え、まとめずに回答していきます。

 

 

 

正直なところ、どれくらいのご飯を食べたいかによりますが、稼げます。弊社が深くお付き合いさせていただいているイラストレーターさんへは、毎月平均して50から60万円ほどの稿料をお支払いしています。また、キャラクターデザインを10体それぞれ20万円で受けてひと月で制作し、月収200万円という知人のイラストレーターさんもいます。どの業界もそうですが、しっかり学び努力をすればご飯は食べていけます。

色の少ないラインスタンプのようなイラストで5,000円だったり、コンセプトアートやキービジュアルだと30万円以上だったりと、かなり幅があります。基本的には頭身や塗り方によって変えますが、大事なことはご自身の時給単価を決めることかと思います。弁護士への相談は1時間1万円というところが多く、つまり簡単に言えば時給1万円です。バイト代が時給1,000円だとして、では自らが絵を描いた場合にいくらになるのか。20時間かけて描いた絵が2万円なら時給1,000円ですし、10万円とするなら時給5,000円です。もちろんクライアントの予算も関係してくるものですが、個人的な意見としてはあまり安売りはしない方が良いと思います。

昔の自分に言いたいこととして考えるならば、たくさんのひとに会ってほしいと思います。インターネットもSNSも、自由に情報へアクセスしているように見えてその実、自分が知りたい情報しか取得していません。その結果知識は偏り、意見は四角く、固くなってきます。他人に会い、他人の興味関心ごとに触れることで、考えや行動、ひいては人生が豊かになっていくように思います。

あくまで「有名になりたいだけの方法」として、となりますが、その時その時の人気コンテンツのファンアートを描くことではないでしょうか。もちろん、しっかりそのコンテンツを愛した上で描くべきだと思います。

わからないことがわからない、という方も少なくないなかで、苦手と気づけている時点でまず第一歩はクリアしていると思います。あとは、これはイラストにかぎらずすべてのことに言えますが、壁を壁だと認識したなら、乗り越えるために行動を続けるしかありません。知り合いのイラストレーターさんは何でも描けますが、それはイラストレーターとしての矜持であり、プロ野球選手が攻守ひと通りできる上でポジションを任されるように、普遍的にできるようになってから特化していくのがプロ中のプロと言えるのではないでしょうか。

画力です。もう少し言うなら、人気のゲームや漫画、アニメを意識したイラストを描かれていると、ご依頼するにあたってとても参考になるのでありがたいです。

ありません。私的な感情をベースにすると、資本主義の社会でお金をもらって生きる以上、簿記は全人類取得しておくべきだとは思います。 いつか義務教育に簿記が入ることを祈っています。

どんなイラストレーターさんとお仕事がしたいか、という観点に置き換えると、相手のことを考えてくださる方です。他人への想像力がある方、と換言してもよいかもしれません。イラスト制作は基本的にクライアントワークとなりますので、独りよがりにならず、他者を気遣えるイラストレーターさんにご依頼したいです。

最近お会いさせていただく若い方々は、皆さんとても優しくしっかりされている印象があります。同年代の頃の自分を顧みるに、ちょっと信じられないほどです。だからというわけでもないのですが、怒ってほしいと思います。それは世の中の理不尽であったり、我々のような年上へ向けたものであったり。あるいはプレイしたゲームが面白くなかった時に、読んだ漫画がつまらなかった時に、「自分が作ったらこんなことにはならない」と怒ってほしいです。怒りは原始的であるがゆえに原動力としてはド級のものがあります。その怒りを、クリエイティブに遺憾なく発揮していただければと思います。

 

 

Q06と同じです。付け加えるなら、ご自身の「好き」が詰まっていることも必要かと思います。たとえば『ONE PIECE』のファンアートや、アニメの絵に倣って描いたイラストがポートフォリオに入っていると、IP(版権)のゲームイラスト制作の相談が来た際に「この作家さんならお願いできそう」とイメージできます。

イラストレーターさんをアサインするにあたりどれほど画力を重視しているか、という質問に換言させていただくと、大まかな返答とはなってしまいますが、かなり高次元な画力をお持ちの方です。最近弊社へいただくイラスト制作のご依頼ベースで考えると、版権(IP)デザインにそっくり似せてかくことができるか、衣装デザインができるか、という点も重視しています。

Q08と同じです。他者を気遣える、という内容をもう少し深掘りすると、「ありがとうとごめんなさいを当たり前に言えるひと」でしょうか。ものすごく基本的なことだとお思いかもしれませんが、できない大人を多く見てきました。特にありがとうはどれだけ言っても言い過ぎということはないので、たくさんありがとうと言いましょう。

ビザの取得は弊社ではできません。一方で、弊社では英語圏・タイ語圏のイラストレーターさんへご依頼することが多々あります。あいだに翻訳スタッフを挟んでいるのですが、タイ在住のイラストレーターさんが戦国武将のキャラクターをデザインしたりもしています。

活動の範囲によりますが、できるできないで言えばできます。ただ結局のところ時間を職業か個人活動のどちらかに振らなければならないので、バランス感覚がとても大事になると思います。

お金と契約関連の勉強ではないでしょうか。どんなに親しいひとから仕事を依頼されても、逆に親しいからこそお金と契約はクリアにしたほうが良いです。電話でイラスト制作の注文が入り、納品したものの連絡が取れなくなり、未払いになった、というケースは枚挙に暇がないほどです。

弊社ではゲームクリエイターをグッズ化していく、その名も「ゲームクリエイターブランド」というプロジェクトを進めているのですが、これはライフワークとしてさらに続けていきます。また、ゲームに向き合えば向き合うほど、教育と向き合うことに収束していきます。ゲームに没頭することが、教育の阻みとならない。そういう社会にするため、いちゲーマーとして教育に貢献していきたいと考えています。

 

 

noteを読んでください、と誘導はしつつ、私は渋沢栄一というひとを敬愛していて、彼のようにしっかり生きるために独立を選びました。考え始めたのは30歳で、起業は31歳なので、学生の頃から「いつか会社を作るぞ!」と気負っていたわけでもない、少し変わった経緯だと思います。

Q08、Q12とほぼ同じとなりますが、お人柄です。丁寧に、礼儀をもってコミュニケーションを取ってくださるイラストレーターさんと弊社はイラストを制作していきます。

AIにかぎった話ではないのですが、「新しいテクノロジーに恐怖を感じたら、それは老いの始まり」という言葉をどこかで聞いたことがあります。私の親は仮想通貨を怖がっています。祖父母の世代は、飛行機に乗らないひともいたことでしょう。インターネット、エレベーター、自動車、機関車が生まれた時も、恐怖を覚えたひとたちはいたのだと思います。しかし結局、テクノロジーの進歩は「なかったこと」にはできないので、世が求めるなら遅かれ早かれ広がり、受容されていきます。それにより、職を失う人々もいます。一方で、新しい職が生まれる可能性もあります。ポリゴンが作られたから、3Dを專門とするクリエイターは生まれました。AIにイラストを描いてもらう言葉は秘匿されたり公開されたりを続け、いずれはAIイラストクリエイターとか、中二病っぽく言うならスペルキャスターといった職業になる未来もあるかもしれません。

イラスト業界に関して言えば、イラスト制作をサポートしてくれる強力な味方になるのではないかなと考えています。VOCALOIDが作られ、2007年に初音ミクが誕生してから、音楽業界は豊かになったように見えます。VOICELOIDが作られ、動画投稿者は格段に増えました。イラストを描くAIも、似たような道を進むのではないでしょうか。

もう少し言うと、だからなんだという話なのですが、本来言葉が要らないからこそ世界中のどこへでも届けられるイラストという存在を、AIが描くのに言葉が必要というところが真反対で不思議だなあと感じています。

くどくど申しましたが、結局だれにも未来のことはわかりません。未来を過度に恐れず、いま目の前にあることに全力を注ぐ。近くのひとを大切にする。そうすれば、自ずと道は開けていくものだと思います。

Q01と同じです。もちろん、一筋縄ではいかない大変さはありますが、大変な仕事だから、それを遂行できるひとをプロと呼びます。

Q08、Q12、Q18と同じですが、お人柄です。具体例を挙げるなら、イラスト制作で遅れそうな時に「遅れそう」と連絡をしてくれるイラストレーターさんに弊社はご依頼したいです。

まずはたくさん描くことではないでしょうか。かの葛飾北斎は34,000点を超える絵を描き、死の間際に「あと5年生きられたら画家になれたのに」と言いました。質の話で言うなら、ケーススタディとして「仮に『グランブルーファンタジー』の依頼が来たらこう描く」と想定し、イラストのテイストを観察・研究し、自分で描いてみる、というのは有用だと思います。

Q06、Q10と同じく、画力です。人気のコンテンツを意識しながらも自分の「好き」を詰め込めているポートフォリオだとバランスが良いと思います。

ありません。しかしながら、資格ということは勉強する必要性が生じますので、なにか業界的にまったく関係ない分野だったとしても、興味のあるものでしたら取得しておくとどこかでその知識が役に立つかもしれません。

Q16と同じです。ゲームクリエイターをグッズ化する「ゲームクリエイターブランド」の話を一歩踏み込んで話させていただくと、スティーブン・スピルバーグやクリストファー・ノーランなど、映画は「だれだれ監督作品」という理由で観に行くことが多々ありますが、ゲームにそういうモチベーションがほぼないことをもったいないと感じています。スクウェア・エニックスさんやセガさん、と企業に憧れ入社を目指すことはあっても、あのゲームクリエイターのようなゲームを作りたい、このゲームディレクターさんを越えるゲームが作りたい、とはあまりなっていないように思います。少年少女がプロのアスリートに憧れ背中を追いかけるように、ゲームクリエイターにもう少し焦点を当て、そのひとを目指せる世になってもよいのではないか。そういう思いのもとゲームクリエイターブランドを進めています。

 

 

資格は特にないというのは何度か申し上げましたが、感性を理性で補完するという意味合いでしたら、色彩検定は取っておいても損はないかもしれません。知ってなくても強いひとは強いですが、知っていると一層強くなります。

弊社で懇意にさせていただいているイラストレーターさんで言うと、給料ではなく報酬とはなりますが、大体30~60万円です。イラスト制作会社のアートディレクター職なら、同業他社さんからお聞きした話も平均すると、未経験で25万円スタート、いっぱしで35~40万円というあたりが相場かなと思います。もちろん、管理職へと昇格していけば、さらにもらえます。

Q08、Q12、Q18、Q21と同じですが、お人柄です。裏切られても裏切らない、誠意ある方と一緒にイラストを制作していきたいです。

これはもう、「話し合う」ことしかないと思います。当事者意識を持ち、問題解決のため純粋に解決策を一緒に探すことです。マウントを取りたいとか、謝りたくないとか、そういう気持ちが誰かしらにあると、基本的に物事はうまく進みません。

弊社のイラスト制作は基本的にゲーム業界の中に含まれているので、つまり売上は伸びました。2020年まで、日本で一番売れていたゲームソフトは1985年9月13日に発売されたファミリーコンピュータ用ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』でした。それを抜いたものが、2020年3月20日発売の Nintendo Switch 用ゲーム『あつまれ どうぶつの森』です。世界中でステイホームが推進された結果、家で遊べる娯楽が圧倒的に普及しました。ゲームも当然ひとびとが買い求め、結果としてゲームに使用されるイラストの需要も増えました。

およそ1ヶ月前後です。緊急性のある案件では2週間の矢継ぎ早な制作になったりもしますが、質と量それぞれを高く保つためには、1ヶ月は最低限必要だと考えています。

メンバーの家族全員一緒にUSJやディズニーリゾート、沖縄や北海道へ行ったり、取締役の小学6年生の息子さんと一緒にスプラトゥーン3を遊んだり、副社長の3歳になる娘さんがお昼寝から起きてきたと思ったらにわかに「竹谷さん、リングフィットやってえ…!」と呟くような会社です。

ゲームのことであっても、社会情勢についてであっても、知識は、それ自体が無尽に役立つものです。大事なのは、知識を活かそうとする姿勢だと思います。

Q16、Q25と同じです。「ゲームクリエイターブランド」は生涯続けます。それとは別に、ゲームやイラスト制作をもっと推進していくためには、逆にゲーム業界外へ視線を向ける必要があると考えています。国内のゲーム業界というものが始まって40年程度、当時子どもだった私たちの世代は、親となりました。コンテンツは30年続くと「国民的」になると言われています。ゲームは、気づけば子どものものだけでなく、老若男女みんなのものとなりつつあります。ゲームへの抵抗感が日に日に減っていっている今こそ、イラストがゲーム業界の境を越えて飛んでいける好機です。

 

 

ゲームをしています。

必要な資格は特にありません。ただひとつ申すとするなら、ある資格を指してこんなもの大したことない、と言えるのは、その資格を持っているひとだけです。

畑は違うものの同じ水を引いているような関係かなと思います。ですので、仲良いですし、よく一緒に遊びます。 いますぐなにか一緒に仕事をすることはなくても、いつか仕事の輪が重なるかもしれない。その時、すでに見知った間柄のほうが効率は上がりますし、楽しいですから。

それはもちろん、『進撃の巨人』です(作者の諫山創先生は九州デザイナー学院ご出身、という浅い忖度がはたらきました)。イラストレーターさんという点では、岸田メル先生はビフォーとアフターを作った方だと思います。それほどまでに、岸田メル先生の描かれる女の子はかわいく、見るひとびとに衝撃を与え続けています。ゲームで言うなら、『ペルソナ5』もまたビフォーとアフターを作ったゲームではないでしょうか。『ペルソナ5』が世に出てから、『ペルソナ5』を意識したゲームデザインやイラストがものすごく増えたように記憶しています。

実際のところイラストレーターさんはフリーランスの方がほとんどです。一部、会社に勤めながら、夜や休日に描かれている方もいます。プロと素人の基準は特になく、一般的には「お金をもらったらプロ」という認識もありますが、個人的には自らを「イラストレーター」と称していく覚悟が分かれ目ではないかと思います。時折、歴の短さをフォローするためか「〇〇の卵です」と自己紹介をする方がいますが、仮に企業Webサイトに「社長の卵です」と記載している代表がいたら、その会社がどんな末路をたどるか想像に難くありません。覚悟とはそういうものです。

Q08、Q12、Q18、Q21、Q28と同じく、お人柄です。他者の成功を妬まず嫉まず、素直に称賛してお祝いできる方と一緒にイラストを制作していきたいです。

Q22と同じく、まずはたくさんイラストを描くことだと思います。「PDCAを回す」というカッコいい言葉もありますが、とにかくD、つまり「行動」を続けることが肝心です。あとは、観察眼を養うことではないでしょうか。ただ漠然と第三者のイラストを眺めるでなく、構図や色合いに興味を持ち、分析して、自らに取り入れる。何事も、意識しているかどうかで、大きく差が出ます。

Q06、Q10、Q23、と同じです。そもそものイラストのクオリティは見つつも、好きな漫画があるならその漫画の、好きなゲームやアニメがあるならそれらのイラストがあると、「このイラストレーターさんはこのコンテンツが好きなんだな」と印象に残りますし、ご依頼する際のイメージができます。

ゲームクリエイターブランド、ゲームと教育の結びつけ、ゲーム業界の外への進出、この3つは先にお伝えした通りですが、弊社は「やりたい」という気持ちを大事に考えています。ゲームやイラストを中心に据えながらも、たとえば「ゲーミングカフェを経営したい」とか「ゲームセンターを作りたい」とか、そういう思いが弊社メンバーから出れば、とりあえずやってみる会社です。だれかの好きな気持ちを阻まない、そういう会社でありたいと強く思っています。

 

以上となります。

正直なところ、Q5の回答を書いているあたりから「これ終わるかな…あと38つも質問がある…」と弱気になりましたが、なんとかすべて記すことができました。長文となり恐れ入りますが、熱は籠められたと思います。

私見がかなり多いため、ひとつの考え方と思ってお読みいただけると嬉しいです。ほかにご質問等ありましたら、弊社Webサイトの問い合わせフォームからお送りいただくか、私竹谷のSNS宛てにご連絡ください。

学生の皆様が、良い人生を歩むそのお手伝いが僅かでもできていることを、心から願っています。

お読みくださりありがとうございました。