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会社設立初年度(2017年)、「ゲームイラスト中心のイラスト制作会社」と伝えるために制作し続けたPRイラストの話。

前社(イラスト制作会社)から独立し、ゲームイラストやイラストを受託制作する会社としてミリアッシュは2017年に設立されましたが、変わらず弊社をご厚遇くださる作家やクライアントの信頼に応えるべく、「しっかりした会社」となることが急務でした。

 

ウェブサイトを始めとした実績と実力をお見せできる場のため、自由に活用できるイラストを制作し続けた初年度の話です。

2020年7月9日

「明治創業の会社」と聞くと、多くの方は「すごい」や「しっかりしてそう」と感じるのではないでしょうか。筋トレ等の努力と同じく、長く続けていくことの大変さや情熱を慮るがゆえの感想なのだと思います。

反対に、設立したての会社は、すごくもなければしっかりしてるようにも見えません。というより、実績がないので、肯定も否定もできない、と言ったほうが正しいかもしれません。
「この会社は、ちゃんとしているの?」
そのため、このように思われてしまうのも、決して珍しくないことだと思います。「ちゃんと」という意味には、色々な要素がありますが、実務(やりとり、仕事)、財務(お金の有無)、法務(契約や権利関係)等でしょうか。

ですので、法人の信頼関係ではなく、個人の熱意で仕事をもらってくることも少なくありません。弊社ミリアッシュの場合は、前社(イラスト制作会社)から権利まわりを引き継げたこともあって、設立初月からすでにご依頼がある、という大変恵まれた状況でした。とはいえ、いつまでその好況が続くかわかりません。恵みに与り天に祈誓をしているだけでなく、土を耕し種を蒔き、自ら実りを得に動かねばなりません。

そして新たな企業と関係を構築していくには、第一印象として「ちゃんとしている会社」と思っていただく必要があります。
では、そう印象を覚えてもらうためには、どうすべきか。
ミリアッシュとしての答えは、会社の外見であるウェブサイトを整え、好感を持ってもらう、というものでした。初めてのデートや就職活動の面接において、身だしなみを整えるように。

そして、弊社はゲームイラストを中心としたイラスト制作会社です。かわいい、かっこいい、すごい。そう感じていただけるようなイラストを、ウェブサイトにたくさん置く。攻撃力の高い武器を並び揃える。

弊社できちんとコストを持ち、弊社を理解してもらうためのイラストを作家さんたちに描いていただく。そのような意図があって、PRイラストの歴史は始まりました。やがて、その端緒から続いていったPRイラストはプロデュースという概念に進化し、PRイラストはプロデュースの一環へと内包されていくのですが、それはまた後日お話できればと思います。

導入が長くなりました。改めて当時から弊社のお仕事を受けていただき、イラストをお描きくださった作家の皆様に改めて感謝の意を表しつつ、PRイラストとミリアッシュの歴史を綴っていければと思います。よろしければ、最後までお付き合いいただけますようお願い致します。

始まり:ミリアとアッシュ by ちてたん 様

記念すべき最初のPRイラストです。まずは王道として、かわいくそしてかっこいいイラストを描いてもらおう、と考えました。

竹谷「社名はミリアッシュに決定!」
杉山「じゃあミリアとアッシュでキャラクターにしよう!!」
寺井「しましょう!!!」

マンガ『鬼滅の刃』で言えば、我妻善逸のようなスピード決裁でした。作家のちてたんさんは、会社設立より前からお世話になっている方で、綺麗で素敵なイラストをいつも描いてくださっていました。このキャラクターたちに関しては、竹谷がスチームパンク好きなのもあって、その世界をモチーフに姉弟として仕上げてもらいました。ふたりの髪色はそれぞれ、弊社のコーポレートカラーです。勝ち気な弟と、大人しそうな姉。すでにストーリー性があって、愛着もひときわ強いイラストです。

3Dモデルの設定図:和風剣士(桜)by 春日屋 様

ゲームイラスト制作と聞くと、ゲームのイベントシーン(スチル)のようなものや、会話時に使用される立ち絵をイメージされる方も多いと思いますが、弊社では3Dモデルの元となる設定図(三面図、二面図等)の制作を、多く手掛けております。とはいえ、設定図自体がゲーム内に出てくることはありませんので、弊社としては「こういう実績があります」と開示することも難しく、ではいっそ弊社で作ってしまおう、という経緯でした。

こちらは春日屋さんにご制作いただきました。桜をモチーフに、服、アクセサリー、小物と、細部の隅々まで丁寧にデザインしてくださいました。

弊社理念の具現化:響千絵(ひびきちえ)by wara 様

独立しミリアッシュと名付けたとて、「ミリアッシュらしさ」といったものは、当時はまだありませんでした。理念、行動規範、ミッション、ビジョン、そのような言葉が、竹谷の頭をぐるぐる周回していた頃です。ミリアッシュらしさを固めていきたい。そんな思索が、このイラストには籠められています。「作家さんを応援する」という思いから、応援団に。着ている学ランの色をコーポレートカラーにして、腕章には弊社のイニシャルとして「mah」を入れました。竹谷は久保ミツロウ先生のマンガ『アゲイン!!』が大好きで、その影響が臆さず出ています。

PRイラストは基本的に、独立前からご愛顧を賜っている作家さんにお願いすることが多いです。こちらを描いていただいたwaraさんも、本当に長くお付き合いいただいています。waraさんの描かれる女の子は、ひたすらにかわいい。『天空の城ラピュタ』のドーラ一家の次男坊であるルイの言葉を拝借するなら「イイ。」の一言に尽きます。

不可欠な要素である背景:森の惑星 by APetruk 様

こちらの背景イラストは、ロシア在住の作家APetrukさんに描いてもらいました。森の惑星というテーマで、人々は樹木と密接に生き、きのこをモチーフとした家に住んでいます。画面左上の物見のような所に小さく3名が描かれていますが、APetrukさん曰くこれはミリアッシュの3名とのこと。竹谷は高所恐怖症なので、かなりの痩せ我慢をして格好つけている姿が想像に易いです。

また、海外在住の作家さんにPRイラストを描いていただくことで、ミリアッシュでは一段深く多種多様なイラスト制作ができる、という印象を持ってもらいたい。そのような狙いも、視野の隅にありました。

女性向け(乙女ゲーム)イラストの需要:和装バンド by 本田あきら 様

ミリアッシュは杉山・寺井・竹谷の3名で、平均年齢が待ったなしに上昇し続ける男性オンリーの会社なのですが、女性向けのゲーム、所謂乙女ゲームイラストのご依頼も携わらせていただくことが多々あります。もちろん、アートディレクションはどのご案件でも尽力遂行しておりますが、こと乙女ゲームイラストに関しては、女性作家さんにご相談したり、サポートに入っていただいたりすることで、男性イラストに対するこだわりを追求しています。

こちらは本田あきらさんに描いてもらいました。昨今音楽グループを取り扱ったコンテンツは増えているように感じますが、楽器の描写は本当に大変と聞きます。その中、しっかりと仕上げていただきました。竹谷の趣味をただ垂れ流すなら、ベースを弾く女性は本当に好きです。

確かバンド名は「和三盆」で、寺井が命名しました。きっとお腹が空いていたのでしょう。

季節の挨拶:下賀茂楓(しもがもかえで) by eventh7 様

気づけば2017年も半年以上が過ぎ、過ごしやすい気候の中でも、うっすらと熱線が降り注ぐようになってきました。

竹谷「すっかり夏ですね」
寺井「夏といえば、お中元と暑中見舞い?」
杉山「ちゃんとした会社っぽい!暑中見舞いのイラストを作ろう!」

夏のお中元や暑中見舞い、冬のお歳暮や年賀状は、善意と気遣いの塊であるからこそ扱いがやや難しく、悪しき風習として語られることも間々ありますが、ミリアッシュでは設立時より欠かさず贈っています。理由のひとつは、「ミリアッシュのこと、たまにでいいので、思い出してください」という打算的で営業的な観点から。もうひとつは、「これ、すごくおいしいので食べてみてください」という本能的で共感的な観点からです。
この時に関して言えば、「ちゃんとした会社に見られたい」という思いは依然として強く、そのためにも、慣例にはひとまず則っておこうと判断した次第です。

以降、ミリアッシュでは季節の挨拶としてイラストが作られていきます。こちらを描いていただいたのは、ロシア在住の作家eventh7さんです。面白いことに、なぜかミリアッシュは期せずしてロシアの作家さんと縁があります。また、こちらのイラストに関して申せば、竹谷は高校生の時分、ポロシャツを着た女子に非常に弱かったため、そちらを再現した格好となります。もちろん、弱点特効があっただけで、甘い出来事はありませんでした。

強さと怖さとかっこよさ:犠牲の天使 by ソーラ 様

ゲームに緊張感を与えてくれる存在のひとつとして、強い敵、つまりボスが挙げられます。主人公たちを圧倒的な力でねじ伏せてきたり、冷酷な手段で苦しめてきたり、つい目をそらしたくなるほど怖い外見をしていたり。なかには、戦う前にこちらのHPとMPを全回復してくれる酔狂なボスもいます。敵の首領や幹部こそが、ゲームを印象づけると言っても過言ではないかもしれません。弊社では、こうしたモンスターやクリーチャーのイラストも数々制作しております。

こちらのイラストは、タイ在住の作家ソーラさんに描いていただきました。タイでは学校でイラストの先生をされていたり、ライブイベントの舞台デザインを手がけられている中、日本では最高級のモンスターをたくさんお描きいただいております。かなり気さくな方で、来日された際はラーメンやビュッフェをご一緒しています。

作家さんのさらなる可能性:血に飢えたジャクリーン by AkiZone 様

作家さんとお仕事をしていくなかで、ある思いが浮かぶ時があります。

「この作家さん、あのプロジェクトにぴったり合致しそう」
イラスト制作を受託するのが弊社のメイン事業ですが、お仕事を「受ける」からといって「受動的」になってはいけない、と常々気を引き締めております。
そして、能動的な受託制作とは、ひとえに提案だと考えております。
クライアントからのご依頼を、弊社では現在コーディネートと定義しております。服を探しに来店したお客に応対するアパレルスタッフさんの如く、要望を聞きながら、培った経験や研いだ嗅覚で、先方に一層満足してもらえるような提案をしていきます。皆さんも、スタッフさんからの提案に惹かれ、本来買おうと思っていたものとは別のものを買ったり、追加で購入したりすることがあるかと思います。独善的に押しつけず、先方に喜んでもらえる提案となるよう、ミリアッシュでは心を砕いております。
弊社事業の場合、作家さんの提案となります。そして先方のプロジェクトイメージに沿った作家さんを提案するため、前もってそのプロジェクトを意識したイラストを描いてもらおう、と考えるに到りました。しっかりとしたお金の生じるイラストだからこそ、作家さんも思う存分に時間をかけられ、精緻濃厚なイラストに仕上げてくださいます。

こちらのイラストは、タイ在住の作家AkiZoneさんに描いていただきました。独特な質感のあるかわいいイラストをお描きになり、弊社ではほぼ毎月のようにご協力いただいております。

初の東京ゲームショウ出展へ:デイアとカデナ by 神代ぴよ 様
色々あって東京ゲームショウに出展することになり、それに際し、来場者の目を引き、通り過ぎるときに和んでいただけるよう、とびきりにかわいいイラストをクリアファイルにして配ろうと思い立ちました。

イラストを描いてくださった神代ぴよさんは、弊社で長くお引き受けしているシューティングゲーム『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』で、いつも驚異的にかわいい女の子を描いてくださっています。

株主優待:無題 by 西藤 様

ミリアッシュは非上場企業です。資本金は350万円で、株主は竹谷、副社長杉山、そしてもうお一方です。

このイラストは、そのお一方へ向けたものです。
副社長杉山の、奥方のご尊父です。2017年、会社を設立した年の夏頃、「息子を応援したい」と、そのために、資本金を入れさせてくれないかと相談を受けました。
単純に、すごくかっこいいと思いました。もともと杉山の奥方はめちゃくちゃかっこいいひとなのですが、それはご両親の薫陶あってのことだと見知った次第です。一度ご挨拶も兼ねてお食事をご一緒しましたが、お話は学が深く、勉強になることばかりでした。ちなみに奥方はご母堂似です。笑い声を立てながら離席していく離れ業の所作がそっくりです。

その御礼を、イラストでお返ししようと、企画させていただいだものです。竹谷の好きなスチームパンクの世界で、奥方のご両親とご祖母の肖像画、というコンセプトです。お三方それぞれのお好きなアイテムイラスト(ラジオ、本、ワイン)を入れていただいています。イラスト完成後、キャンバス印刷をしてお送りしました。お喜びいただけたようで、飾ってくださっているとのことです。

こういう時、会社を起こしてよかったと改めて思いを噛み締めます。あまり使うのも気が引ける言葉かもしれませんが、幸せだと感じます。

こちらのイラストは西藤さんに描いていただきました。現在お仕事を休止なさっている作家さんなのですが、かっこよくて、あたたかさのあるイラストを描いてくださる方です。

おわりに
ウェブサイトを見、PRイラストを眺めていた折、それぞれのイラストが生まれたストーリーを記さねば、と心が燃えた結果の内容でした。記憶はどうしても風化してしまうので、その前に記録にしておかなければと。歴史的偉人が彫像となり、見る人々の記憶を浮上させるように、ミリアッシュもまた、作家さんとイラストを、会社の沿革とともに記録していく。そんな考えのもと、アーカイブは始まりました。

文章にした言葉は残ります。ゆえに強い。

その強さにあやかり、ミリアッシュのすべてを記していければと思った次第です。お読みくださり、ありがとうございました。